シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
櫂と玲くんが話していると、桜ちゃんがやってきて。
煌を探しに行くという桜ちゃんと別れて、あたし達は保健室に戻ることになった。
破られていた符呪。
それが凄く痛手に感じる。
「桜が…裂岩糸が千切られていたって言ってたな」
櫂が訝しげな声を出す。
「そして校舎に…"あの女"が乗り込んだ。やはり…偶然とは思えないな。"あの女"の出現は」
必然だとしたら…その意味は何?
「"彼女"だけではないよ。結界内部において、櫂の気づかないまま符呪が破られている。聞こえてきた奇妙な叫び声といい、何か…起きているね。まあ…起きてこないほうがおかしいのかもしれないけれど。少しずつ…その姿を見せ始めるか」
玲くんが固い声を放つ。
「見てごらん。彼ら、さっきまでは窓ガラスに張り付いていたのに…今は、弾かれたようにある一定の距離を保っている」
「ど、どうしたのかな…?」
あたしは"櫂に"聞いた。
ずっと右側に立つ櫂に向けているあたしの顔。
首が痛い。
左側の玲くんから、視線を感じる。
凄く感じてはいるんだけれど…
顔が…見れなくて。
――僕、紫堂玲は…神崎芹霞が好きです。
ストレートにそう言われてしまったら、どう反応すればいいのか判らなくて。
今、考えるべきコトは櫂だ。
なのにどうしてそんなことを言ってきたのか判らない。
優しい玲くんなら、櫂を優先させるはずなのに。
嬉しいとか恥ずかしいとか、そんな感情より真っ先に湧き上がったのは、あたしの事情は後回しにしないといけない、ということ。
今日中にどうにかしないといけない中で、好きだの嫌いだの…そんなこと言ってる暇も余裕もないはずだ。
だけどあたしの身体はかなり過剰に反応を示すんだ。
あたし、ここまで自分が単純馬鹿だと思わなかった。
――君の…心が欲しい…。
玲くん…何て爆弾を投げて寄越したんだろう。
あたし恋愛初心者だって判っているでしょう!!?
「どうした、芹霞?」
怪訝な顔をした櫂。
あたしは、儚げに笑うこの幼馴染を何としても助けたい。
今は私情は禁物だ!!!