シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
 
だけど――


「!!!」


すっと…すり寄るように真横についた玲くんが、あたしの手をぐっと後ろに引いた。


後方で――

重ねられる手と手。


絡む指と指。


驚いたあたしがそれを放そうと抵抗を試みるけれど、玲くんは許してくれない。


逆に痛いくらいに力を込められて、鎖のように雁字搦めに縛り付けてくる。


何、突然何なの!!?


あたしは痛みに涙目になりながら、理不尽な行動の意味を玲くんに求めた。


だけど玲くんはこちらに目を合わそうとしない。


代わりに真っ直ぐに櫂を見ている。


「……どうした?」


穏やかそうに笑う櫂の目。


だけど一瞬――

鋭く険しいものが横切った。


判ってる。


きっと櫂には判っている。


それが更に居たたまれない心地にさせ、罪悪感さえ感じて、あたしは一生懸命手を振り解こうとするけれど、やはりびくともしない。


いつかの…時のようだ。


"約束の地(カナン)"では堂々と玲くんと手を握っていたけれど、それとこれとは状況が違う。


あたし達は、"恋人"のフリをする必要がないから。



暫し見つめ合い、対峙する玲くんと櫂。


玲くんの目が…苛立ったように細められて。


「余裕だね、櫂」


「……」


「お前が"決行"したら、こうなるってことだよ?」


そして玲くんは、あろうことか…"恋人繋ぎ"をした手を、櫂の目の前に出してしまった。


ぴくん、と櫂が反応する。


だけど、それだけ…だった。



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