シンデレラに玻璃の星冠をⅠ

少しばかり強引に行こうと思えば、必ず何かに邪魔される。


朝だって、玲にフライパン投げられたし。


桜より…玲の場合はえげつねえから、油断すればどんな制裁加えられるか予想つかねえ。


昔はここまで酷くなかった。


手より、言葉の方が凄かった気がする。



それに例え遠回しでも――

少なくとも櫂の前で、櫂の意向を無視して。


…芹霞は自分のモノだと主張しているように思える場面を作るなど、以前の玲なら絶対なかったし。


玲も――

ヤバいところまで追い詰められているんだろう。


だけどあいつは、芹霞との"おでかけ"という切り札がある上、芹霞にやたらと懐かれている。


絶対、俺よりスキンシップは多い。


やっぱり、2ヶ月間の入院生活で玲がつきっきりの…献身的看護をしてから、芹霞の玲に対する態度が更に軟化した気がする。


そうでもなきゃ、"約束の地(カナン)"で、"お試し"であれ…偽装恋人なんて了承しねえだろう。


俺が相手だったら、多分拒否られていると思う。


哀しいけれど。


正直――

このままだと、玲と芹霞の仲が進展しそうで。


芹霞が、玲を"男"として意識し始めているの、判るんだ。

玲の前で、赤くなることが多くなったから。


俺にとっての救いは、玲にまだ"迷い"がある為に、芹霞がからかわれていると思っていること。


あそこまで深く惚れ込まれていても、素直に受け取れない阿呆タレ。


全員が言葉で告っても、平然としていられる至上最強の阿呆タレ。


本当にあいつの頭の中、切り開いて覘いて見てえよ。


何でそんな厄介な奴に、皆惚れてしまったんだろう。


"態度で判ってくれ"なんて、そんな高等技術…芹霞に求めるのは時間の無駄だ。


そう。


これ以上の関係を築くためには、

こちらからのもう1歩の踏み出しが必要なんだ。



俺だけじゃない。


櫂も玲も。
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