シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
櫂の大きな背中を見ながら、寂寥感のような物悲しさを感じた。
あたしは…櫂に、どんな反応を期待していたんだろう。
少なくともそれは、こういう"無視"の形ではない。
「……」
あたしの手から、温もりが離れた。
玲くんが、手を離したんだ。
「……ごめんね。
嫌だったでしょう?」
悲しげな声に、
「嫌…なわけじゃない。突然過ぎたから…」
あたしが、ふるふると頭を横に振って否定すると、玲くんが儚く笑った。
「……ねえ、芹霞」
そして玲くんは、あたしの肩をそっと抱き寄せて。
揺れる鳶色の瞳で、惑うあたしを映し出す。
「僕を見て……?」
消え入るような小さな声で囁いた。
切なげに、その瞳は細められる。
「僕が消えないよう…
僕を…捕まえて…?」
あたしの肩を掴む手にぎゅっと力を入れられた。
「僕だって…
君の近くにいるんだよ?」
さらりと、あたしの首に…線の細い鳶色の髪が零れ落ちた。
あたしの首筋に、玲くんの顔が埋められたんだ。
「僕を…弾かないで。
僕は…君に避けられたい為に…言ったんじゃない。
意識して欲しいけど…
拒まれるのは…辛い…」
苦しそうな声で。
「どうして君は…
1人しかいないんだろうね…」
何だか切なくなって、あたしは涙が零れるのを必死に堪えた。