シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
「玲くん…何でそんな不吉なこと言うの?
皆して、何で消えちゃうような言い方するの?
明日はちゃんと来るよ。
間違いなく、いつも通りの朝が来る!!!
大丈夫。櫂はきっと勝つから。
不安は解消されるから!!!
あたし達の櫂は絶対大丈夫!!!
あたしでいいなら、安心出来るまで…ずっとこうしていて上げる。
櫂を…明日を信じよう?」
そう、背伸びをして鳶色の髪の毛を優しく撫でると、玲くんは首を横に振った。
「芹霞、違う…僕が欲しいのは慰めじゃない。
僕は…本当に君が好きなんだ」
だけどあたしには、その真剣さこそが、不安そのものの現れだとしか思えなくなっていて。
「あたしも、本当に玲くんが好きだよ?」
「だから、そういう意味じゃなく!!」
玲くんは一瞬、端麗な顔を苦しそうに歪ませると…傾けた顔をあたしに近づけようとして、
「……くっ」
…悔しそうにきゅっと唇を噛みしめて、動きを止めた。
「玲くん……?」
「煌の…言う通りだな…。
この状況じゃ、何をしても伝わらない…。
櫂しか…見えてない」
「え?」
玲くんは笑った。
「明日は来る…か…」
泣き出しそうな顔で。
「明るい明日が来るなら…
明日になら伝わるのかな、
僕の――…」
最後は震えて聞こえなかった。
静寂が――…
あたし達を取り巻く。
外界の喧騒が…鎮まっていたことに、
その時のあたしは気づかなかった。