シンデレラに玻璃の星冠をⅠ



「芹霞、危ないッッ!!! 玲の結界から抜けるなッッ!!!」



あたしは櫂の声と手と振り切って駆けた。



「煌!!!!」


あたしは、煌の腕に抱きつくようにして、その動きをやめさせた。


何かが腐ったような悪臭が強まる。


ちらり。


煌がしでかした、ソレの姿を視界に入れてみる。


途端に嘔吐が込み上げ、手で口を押さえた。


"微塵切り"


もう…暫くは、それを用いた料理はやめよう。


固く固く心に誓う。


そして澱んだ褐色の瞳を見遣った。



「煌。

――戻っておいで?

あんたは…こっち側の人間だ」



何でそんな言葉が漏れたのかは判らないけれど。



「戻ってきて」



煌は…何か言いたげに口を開いたが、きゅっと強く口を結んで、顔を横に背けた。


だらりとした腕から、偃月刀がカランと音をたてて床に落ちた。


とりあえず、煌は取り戻せた。



あたしはそう思って、ほっと胸を撫で下ろしたのだけれど。


やはりあたしは向う見ずで。



「芹霞、来いッッ!!」



櫂の声。


さわさわ、さわさわ。


足から…何かが這い上がってくるよ。


身の毛がよだつような不快な感触。
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