シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
 
「…俺、ちょっと外行ってくる」


最初にリタイアしたのは煌で。


真っ青な顔のまま、口を押さえて部屋から出た。


「櫂様、玲様。お食事中ですが、馬鹿煌の様子を見て参ります」


一礼した桜も煌を追いかけて出て行き、


「葉山~、俺も~」


更に皇城翠も出て行った。


「犬に麹って…食い合わせ悪かったか?」


「ううん、ウチのワンコは雑食だし、何でもがつがつ食べるから。きっと今日はナーバスな男の子…"オス"の日なんだよ、そっとしておこう?」


「そうか…ワンコも色々大変だよな」


凄い…会話だ。


というか、僕達…食べている暇あるのだろうか。


「師匠。七瀬の明らかな"善意"を見て、突っぱねられるのは人じゃないよ。鬼だね、鬼」


目の前では――


「ほら、朱貴も喰え?」


「誰が喰うか、そんな蛆入り。俺に恨みでもあるのか、ああ!!?」


窓際にある回転椅子に、長い足を組んで座っている朱貴。

懐から取り出した煙草に火をつけ、口から吐き出す煙を、紫茉ちゃんの顔に吹きかけた。


「お前は…翠がいなくなると、いつもどうして態度が…」


「何だって? 言ってみろ、紫茉。ひ弱なお前が、普通の暮らしが出来るようになったのは、誰のおかげだ?」


「薬のおかげ…うわっ、叩くな、殴るな!!!」



「師匠~鬼は…鬼畜はいるみたいだけれども、ボク達は心があるからね。ううっ…。白いのが、白いのが…気合いだ、ええいっ」


由香ちゃんは涙目だ。

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