シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
 
「何よ? 人の顔じろじろ見て」



芹霞が、変人でも見るような眼差しを寄越した。


「もっとさ…嬉しそうな顔向けられねえ?

久々に顔合わせてるんだぜ?」


思わず俺はぼやく。


「一応…デートって言ってもいい状況なんだし」


「……。言ったあんたが真っ赤になってもじもじしてどうする!!」


ふう…。

意識しているのは、やっぱ俺だけか。



「判るだろうがよ。俺はお前が……」


「ストップストップ!!! こんな道の往来で何言い出すの!!!」


芹霞が真っ赤だ。


判ってはいるらしい。


赤くなるって事は…意識してくれてんのかな。


「じゃあ、人気無い処ならいいわけ?」


意地悪く聞いてみる。


「そ、そういう意味じゃなく~」


「じゃどういう意味? 言ってみ?」


「~~ッッ!!! 煌の馬鹿!!!」


どんなに罵られても、可愛いとしか思えねえ俺は、重症だ。


俺はにやける顔を必死に抑えながら、そろそろと手を伸ばして、芹霞の手を握る。


「な、なななな!!!」


「今まで何度も手を繋いで歩いたことあるよな? 今更じゃね?」


「ななななな!!!」


意識しているのが嬉しくて仕方が無い。


だから俺は、調子に乗って指を絡ませた。


口笛吹いて誤魔化してみたけど…手が震える。


デートのオプションとして、そういう繋ぎ方をしたことがないから。


ああ。


玲のようにさらっとはいかねえ。


結構…ヘタレな俺としては頑張っている。


滅茶苦茶頑張っている。


顔が…火のように熱い。




そんな時だ。



「ねえ、煌」



何かを考えていたような芹霞が口を開く。


「…ちょっと寄りたい処があるんだけれど」


俺の脳裏には、櫂の言葉が蘇る。


――芹霞の携帯に、"シマちゃん"からメールが入っていた。


来たな。


――芹霞に道草させずにきっちり此の家に戻せ。


よし、ここは毅然たる態度で突っぱねよう。


櫂から一任されている俺は、そう決意する。

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