シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
櫂。
最初こそ動揺していたけれど、
本当にお前は落ち着き払っているよな。
どこから来るんだ、その余裕。
――約束、して欲しいんだ。
あんなことを言い出して、どうして平然としていられる?
僕の挑発も乗らなかった櫂。
結局僕は、櫂を煽ろうとして…僕が儚い想いに煽られただけ。
いつもいつもそうだ。
僕が心を痛めつけても、それが明るい未来に繋がらない。
痛んで傷ついて…それでフェードアウト。
上手くいかない。
苛々するほど、上手くいかない。
僕は…此処まで恋愛下手だったのか。
カタンと音がした。
櫂がお椀をテーブルに置いた音だ。
櫂は切れ長の目を、真っ直ぐに朱貴に向けていた。
「紫堂櫂。俺の言いたいことは判っているな?」
朱貴の声に、櫂は頷いた。
「ああ、お前が来るまでの約束だ。
だから…此処を出て行く。
飯まで食わせて貰って…助かった」
そう、頭を下げた。