シンデレラに玻璃の星冠をⅠ

この保健室の領域が朱貴のものだと言えるのなら。


独自世界を作り出せるのなら。


彼もまた五皇並の力があるということ。


氷皇も緋狭さんも、久涅も…皆が知っていた朱貴。


黄色い外套男と見(まみ)えても、五皇や久涅と見えても。


切り抜けて生きていられる男。


ただし、彼らとは協力体制の関係にはない、僕はそう感じた。


「五皇と…どう関係があるんです?」


しかし――


「……」


朱貴は無言にて、回答を拒否した。


深い、翳りの落とした顔つきで。


やがて口を開く。


「三尸は…人々の"不安"と"恐れ"を食い物にする。"あの女"の撒いた種が、お前達が大きく育て上げ、互いに共鳴し合い、そこにアイツの罠が発動して…三尸が溢れた。

お前達の動きは見透かされていると思っておけ」


不安。

恐れ。


少なくとも、僕の中はそればかりで。


ああ、櫂もだろうか。


僕が頼った煌も、きっと桜も。

芹霞も由香ちゃんも。


不安は、確かに不安を呼んでいた。


爆発しそうに…膨張していたんだ。



それこそが…罠。


惑いやすい僕らを見越し、緋狭さんが張った罠だというのか。



「"あの女"から聞き出したことは…全て偽りなのか?」


櫂が訊いた。


「本人の一部から復元した使い魔は、必ずオリジナルの記憶なり心なりを継承して出来ている。使い魔の出来がよけれよい程、使い魔の心の動きは、本人にダイレクト返されているはずだ。リンクがなされている」


そして朱貴は腕を組みながら言った。


「覚えておけ。

此の世は夢と現が継ぎ接ぎだらけで出来ている。

夢の世界の住人が現実に出る時、或いは現実の世界の住人が夢に出る時。

それ相応のエネルギーを必要とする。


"生ける屍"は…その為の供儀だ」
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