シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
思わず目を細める僕達の前で、朱貴はすくりと立ち上がった。
「紫堂櫂。今から、本物のエディターに会わせてやる」
「え?」
「これを逃せば、お前にチャンスはなくなる」
そして――
「紫茉。紫堂櫂と…
あの"使い魔"に潜れ」
威嚇めいた口調で、そう言った。
「10分。
10分くらい、外敵からお前の身体を守ってやる。
――仕方が無く」
「は!!?」
「昨日、こいつらが消えた後、お前は俺に再度土下座したろう。何が何でも助けてやりたいと。だったら…身体を張れ。
紫堂櫂が共にいれば、流離(さすら)う危険はないだろう」
「……紫茉ちゃん?」
首を傾げた芹霞の顔を見て、紫茉ちゃんは唇を強く結んで…やがて深く頷いた。
「判った。やる」
1つに結った長い黒髪が、彼女の首筋で大きく揺れた。
「……"潜る"とは何だ?」
櫂の声に、紫茉ちゃんは苦笑して。
「あたしは全くの普通人なんだが、1つだけ…特技があってな。
あたしは…人の"夢"に潜ることが出来る…んだ。
いつもはただ流されて、他人の夢を垣間見る程度なんだが、対象者に狙いを定めて潜るとなれば、その世界を固定するだけの、かなりの精神力が必要で、更には…こちらを追い出そうとする世界は危険すぎて。
あたしが世界を固定している間に、必要部分を"解釈"して…あたしを連れ帰ってくれないか?」
そう、櫂に言った。