シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
「ちょっとばかし渋谷に「無理」
すると芹霞の口が、不服そうに尖ってくる。
「お前状況把握してる? 昨日泣いて飛び込んできたの誰?」
更に芹霞の口が尖る。
まるでひょっとこだ。
「きちんと帰るぞ。俺、櫂からもそう言われてるし」
「ちょっとだけだし、煌が黙ってればばれないじゃない」
「あいつの異常な勘の鋭さ、お前だって判ってるだろう!!? それにあいつ怒らせたら、此の世が凍りつくぞ!!?
櫂がどうの言うより、少なくとも13日間の道草は駄目だ!!!
桐夏通学を却下されないだけ、ありがたいと思え」
「はあ!!? 何それ、横暴!!!」
「だから~~ッッ!!!
お前緊張感なさすぎなんだよ!!!
昨日、怖い思いしたじゃねえかよ!!!」
「したけどさ、でも今は昼間だし、何より煌が傍にいるんだし…」
俺より遥かに強い榊がやられているというのに、こんな俺を頼りにしてくれてるのか?
凄く――嬉しかった。
「ねえ…煌、一緒にイこう?」
そんな状況で強請(ねだ)られれば、先刻までの頑なな拒絶感は薄れていて。
しかも、その台詞…禁欲生活長い俺にとっては、辛いんだってば。
「デートしよ?」
やば。
緋狭姉直伝の悪女の"上目遣い"出しやがった。
「だ、だ…駄目…だ」
「煌は、あたしと遊びたくないの?」
途端俺の言葉はしどろもどろ。
「そ、そりゃあ俺だって男だし、デ、デートして帰りたいのは山々だけど。
だけど、芹霞を危ない目に合わせたくないし。
判れよ、そこんとこ~」
「ねえ煌…」
芹霞がにやりと笑った気がした。
何処となく…緋狭姉じみているような?
「このまま…手を繋いだまま渋谷行かない?」
それは誘惑。
「あたし煌と遊びたいな~、デートスポットで」
"デートスポット"
俺は――
「あたし達、きっとラブラブにみられるね~」
"ラブラブ"
ああ、俺は――。