シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
桜が、小猿より、俺の吐瀉物を隠すように立つ。
それにより、或いはそれ処ではないからか、小猿は俺の異変には気付いていないようだ。
「外から、どうやって入って来たんだ?」
突如桜が、小猿に問いかけた。
「此処には私の裂岩糸が張り巡らせてある。何故私に気配を悟られず、朱貴とこの学園に乗り込めれた?」
「……言ってる意味がよく判らない。俺は朱貴にくっついてきただけ…だけど…確か朱貴が言ってたな」
――中から招待されているらしい。俺の動きは…アイツの手の内か。
「アイツ…?」
桜は腕を組んで、鋭い目を向けた。
「誰かまでは知らないよ」
「……。中からとは…やはり手引きしている奴がいるのか」
どくん。
俺の心臓が不穏な音を立てる。
「小猿。あの蛆…それは、遠坂に入っていた"三尸"の幼虫なのか?」
「ああ。俺も実際見たのは初めてだけど、昔朱貴にそういうものだと聞いたことがある。やがてあの蛆はサナギとなり、蝶になるらしい」
「蛆とは…蠅の幼虫ではなかったか?」
「自然界ではそうかも知れないけど、あの三尸は…"式神"らしいから」
「式神?」
「ああ、朱貴が言うには…黄幡会にもいたらしいぞ、その三尸使い」
どくん。
「基本、式神っていうのは、術者の望んだ姿形を取るから、三尸使いというより…式神使いってトコだな」
「式神…とうことは、皇城関係ということか?」
「皇城では"式神"と言ってるけど、他では"使い魔"とかイロイロ名称はある。ほら、お前達が敵対した凄く強い女いただろう、あの赤い女。
あいつだって…式神出していたじゃないか。が、がが…」
「金翅鳥(ガルーダ)?」
俺が聞くと、翠はこくこくと頷いた。