シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
 
「そうそう!!! あのレベルは…凄いよ。兄上並だ。噂では兄上もまた変幻自在に式を操られたみたいだけれど…あの女の式も、兄上に引けをとらないと思う。俺…式か本物か区別つかなかったし、何より式の威力が凄まじい。何者だよ、あの女」


緋狭姉…。



「朱貴は"あの女"から溢れた三尸を祓い、幻覚を解いた。それでも生き残られる三尸がいるというたら…どういうことが考えられる?」


「作られた三尸が…朱貴よりも強い力を秘めているということ。術者の力の方が朱貴に勝っているということだな。どちらにしろ、そんなものが体内にあれば…術者の完全"傀儡"になって自我意識なんてないだろう、普通は」


なあ…俺――


「ただまあ…今回、傀儡なのは三尸ではなく…保健室に居た"エディター"だとかいうあの女にそっくりな式で、あの女を運び屋にして、三尸を撒き散らしていたらしい。朱貴が言うには。現場見るまで何のコトやらさっぱりだったけれど。

式を"エディター"みたいに…あんなにリアルにするとは…術者のレベルは相当だぞ? 兄上は、髪の毛1本で、式にも式だと悟られない、完璧複製をやってのけたらしいけれど…それレベルだ。三尸入りの"エディター"、2つの式を操っていたようなもんだからな」


俺――


緋狭姉に"操られていた"んだろうか。


「三尸は、人々の"不安"や"恐怖"を餌に増大する。そして最終的には、人間を呑み込み…夢の世界に閉じ込めるらしい。

お前ら本当、ツイテるぞ? 朱貴いなかったら…死ぬより辛い目に遭ってだろう」



知らぬこととはいえ、判らぬこととはいえ。


俺のナカに、三尸というものがいるのなら。


「私達の結界が不完全だった為、そんな危険な"あの女"を中に招き入れてしまったのか」


俺は、それを放った者の…緋狭姉の…傀儡となっているかも知れねえ。


桜の糸は、あいつが敵と認めぬ限りは、ただの糸になる。


桜にとって、俺は同僚(以下?)だから。


だから俺なら…桜の警戒をかい潜って、糸を引き千切られるだろう。


そして――。


"あの女"を見つけて追いかけたのも俺なら、引き入れたのも…俺なんだ。

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