シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
 
そしてその内、俺は――


あの女みたいに、櫂達を危険に巻き込むのだろうか。


俺を信じる櫂達を、俺は裏切ってしまうのだろうか。


桜は言わない。


その危険な可能性に行き当たっているはずなのに、俺に何も言わない。


何だかそれが――…

凄く救われた。


本人でさえ自分自身を疑う中、桜が俺を責めないのが…凄く嬉しかった。


静まり返ってしまった目の前では、小猿が意を決したように口を開く。


「な、なあ…葉山、そんなことより…「"生ける屍"は?」


桜は、まるでその意図を汲み取ってはいない。


桜の頭の中は、状況判断と打開策で一杯のはずだ。


小猿の目が潤んだ。


「……"生ける屍"って、何だ?」


「外に居ただろう、集団で」


「……さあ? そ、それより「外界の様子は?」


まるで、俺と芹霞を見ているようだ。


「……。普通だよ、普通!! 野犬が惨死していたらしいのと、何か引き摺った痕があって…更には近くに祀られていた道祖神が破壊されていたらしいから…七不思議の1つが品川で新たに起きたのだと…騒いでいた奴らはいたけれど…」


「七不思議…?」


――ギャン、ギャン、ギャン!!



「……。引き摺ったって…何を? 屍体とかか?」


――ぴぎゃあああああ!!



「いや…泥まみれの小さい"何か"みたいで。近くに寺があるらしくて…その一角の中庭から、何かの植物…雑草みたいのが引き抜かれていたらしい」


――十思公園の植え込みが荒らされ、掘り返されたような跡があったとか。それが何か悪いもので、それを食べた野犬が狂死したのかしら?
< 789 / 1,192 >

この作品をシェア

pagetop