シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
そしてその内、俺は――
あの女みたいに、櫂達を危険に巻き込むのだろうか。
俺を信じる櫂達を、俺は裏切ってしまうのだろうか。
桜は言わない。
その危険な可能性に行き当たっているはずなのに、俺に何も言わない。
何だかそれが――…
凄く救われた。
本人でさえ自分自身を疑う中、桜が俺を責めないのが…凄く嬉しかった。
静まり返ってしまった目の前では、小猿が意を決したように口を開く。
「な、なあ…葉山、そんなことより…「"生ける屍"は?」
桜は、まるでその意図を汲み取ってはいない。
桜の頭の中は、状況判断と打開策で一杯のはずだ。
小猿の目が潤んだ。
「……"生ける屍"って、何だ?」
「外に居ただろう、集団で」
「……さあ? そ、それより「外界の様子は?」
まるで、俺と芹霞を見ているようだ。
「……。普通だよ、普通!! 野犬が惨死していたらしいのと、何か引き摺った痕があって…更には近くに祀られていた道祖神が破壊されていたらしいから…七不思議の1つが品川で新たに起きたのだと…騒いでいた奴らはいたけれど…」
「七不思議…?」
――ギャン、ギャン、ギャン!!
「……。引き摺ったって…何を? 屍体とかか?」
――ぴぎゃあああああ!!
「いや…泥まみれの小さい"何か"みたいで。近くに寺があるらしくて…その一角の中庭から、何かの植物…雑草みたいのが引き抜かれていたらしい」
――十思公園の植え込みが荒らされ、掘り返されたような跡があったとか。それが何か悪いもので、それを食べた野犬が狂死したのかしら?