シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
 

「なあ煌。

まさか…翠が、関係していないか?」


「ああ?」


「朱貴の術でも抑えられなかったお前の中のモノ。吐いてばかりのお前が、翠が来た途端、一度も吐いていない。居なくなった途端…また吐き出すのなら。無関係ではないかもしれない。捕まえて、確認しろ」


少しだけ――

桜が笑った気がした。


俺の中に…何か、明るいものが差込んだ気分。


もしも。


小猿の存在が、俺の中の"奴ら"を抑止できるというのなら。


少しの間でも、抑えて貰いたい。


櫂を守る間は。


その後は、どうなってもいいから。


だから今だけの間だけ。


俺は――小猿を探しに走り回る。


間中、胸のむかむかが止まらねえ。


小猿は意外に早く見つけ出すことが出来、近づくにつれ…


間違いない。


吐き気は止まる。


凄い、この小猿。


俺は嬉しくなって、壁の角で後ろ向きに体育座りをする小猿に、後ろから飛びついて抱きついてしまう。


「う、うわっ!!! わ、ワンコ!!? やめろ、俺…そんな趣味ねえから!!!」


俺は…小猿から手を離して、床に落としてしまった。


「俺だってそんな趣味ねえよ!!! お前じゃあるまいし!!」


「はあ!!? 俺だってないよ、そんな趣味!!! 俺が好きなのは男じゃなくて」


「桜なんだろ?」


「!!!

!!!!!!!

!!!!!!!!!」


何でそんなに驚くんだろう。


「な、何だよ…葉山は自分のもんだと自慢しにきたのかよ!!!」


こいつ本当に泣き出しそうだ。
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