シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
 
「うん。紫茉は唯一、他人の夢に忍び込めるという力があるんだ。ただ誰の夢か、予知夢か、過去の映像か、隠したいモノか、無意識の願望なのか…判断が出来ない。

以前周涅から言われて、特定者の中に忍ぶというものをしたらしいけれど…あれって凄く危険らしくて。死にかけたことがあったんだ。それ以来、流れに身を任せるように、ただ"視て"いるだけにしたらしい。それも突然不定期に連れられるから、紫茉も困っている。あれの後って、視てるだけでもかなり体力消耗するらしいしな。元々紫茉…身体が弱いから」


そんな特技あったのか、七瀬。


「今だからこそあんなに元気に外歩いているけど…前は高熱出して酷かったらしいぞ? それが朱貴からの薬で…回復出来ているけれど、薬というより、朱貴の力のおかげじゃないかな。薬は…熱を抑えることは出来るけど、普通体力までは回復出来ないだろうし。そこら辺紫茉も判っているから、凄い朱貴に懐くだろ?」


「な、懐く?」


「ああ。俺の朱貴にべたべた…イラッてくる程」


翠は、不機嫌そうに言い捨てた。


べたべた…。


七瀬…悲鳴上げて逃げ惑っていないか?

むしろ近付いているのは…。


「もしや…朱貴って七瀬に…」


「あるわけないだろ!!!? むしろ逆だろ!!? 朱貴はあんなに嫌がっているのに、紫茉が追いかけ回しているじゃないか!!! 見ていて朱貴が可哀相になってくるだろ!!? 俺は、紫茉と朱貴なんて、絶対絶対認めないからなッッ!!!」


キーキー、キーキー。



やはり…小猿の感覚って、ずれている。

七瀬もずれているけれど…。


固定観念って…怖い。



――その時。



「ど、どうした、ワンコ!!?」


「――敵だ」


突然、ピアスを偃月刀に顕現させた俺に、翠は息を飲んだ。



「1体…だけじゃないな。複数おいでだ」


そう呟くと同時、前方で銀色の閃光が瞬いた。


俺は偃月刀で、それを叩き落とす。


柄に薔薇の刻印。


銀色の…メスのような小刀。

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