シンデレラに玻璃の星冠をⅠ


「わわわ、今度はあっちから!!! あっちは万年筆が浮いてない!!! ワンコ、ワンコッッ!!! 瘴気を辿れ、きっとそこに敵が…《妖魔》が居る!!!」


「瘴気を辿れって…そんなの、とうにこの校舎は瘴気塗れじゃねえか!!」


「《妖魔》を放っておけば、人間の器に入り込んで…人を殺しまくる。もしここで、先刻の刺客だけではなく、桜華生が登校してきたりしたら…全部が全部…敵になるぞ!!?」


「冗談じゃねえ!!」


交差する青光。


俺と小猿はそれを除けながら、逃げている。


だけど逃げるだけでは問題は解決しねえ。


俺は、特段濃くなった瘴気に向けて偃月刀を振り回して見るが、手応えが感じられない。


空を切っているような感覚だ。


青光の数が減っているのを見れば、敵を直撃したのかも知れないが…物理的な手応えがないから…大いに戸惑う。


そんな中、瘴気は…どんどん濃くなっていく。


見えないっていうのは、本当に不便だ。

見えないのは、あの蝶だけで十分だというのに!!!


どうにかして、対象を目視したい。


「そうだ…小猿、鏡!!! 鏡見せろ!!!」


「え? ああそうか!!! えい…ああ!!?」


八角形の鏡を覗き込んだ小猿が声を上げた。


「やば…やばやばやば!!! 酷いことになってる!!!」


「酷いってどんな!!?」


「とにかく凄い。凄いんだ、何もかも…」


俺の語弊力のなさは…自他共に定評はあるが、小猿ほどではないと…信じたい。


小猿の言葉からは、まるでさっぱり、状況が判らねえ。


「ああ、もう!!! 俺にも見せろ!!!」


見るが早しと、苛立った俺も覗き込んでみたが…何も見えねえ。


俺が見ている景色と同じで。


ちっとも事態が把握出来ねえじゃないか!!


< 797 / 1,192 >

この作品をシェア

pagetop