シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
「わわわ、今度はあっちから!!! あっちは万年筆が浮いてない!!! ワンコ、ワンコッッ!!! 瘴気を辿れ、きっとそこに敵が…《妖魔》が居る!!!」
「瘴気を辿れって…そんなの、とうにこの校舎は瘴気塗れじゃねえか!!」
「《妖魔》を放っておけば、人間の器に入り込んで…人を殺しまくる。もしここで、先刻の刺客だけではなく、桜華生が登校してきたりしたら…全部が全部…敵になるぞ!!?」
「冗談じゃねえ!!」
交差する青光。
俺と小猿はそれを除けながら、逃げている。
だけど逃げるだけでは問題は解決しねえ。
俺は、特段濃くなった瘴気に向けて偃月刀を振り回して見るが、手応えが感じられない。
空を切っているような感覚だ。
青光の数が減っているのを見れば、敵を直撃したのかも知れないが…物理的な手応えがないから…大いに戸惑う。
そんな中、瘴気は…どんどん濃くなっていく。
見えないっていうのは、本当に不便だ。
見えないのは、あの蝶だけで十分だというのに!!!
どうにかして、対象を目視したい。
「そうだ…小猿、鏡!!! 鏡見せろ!!!」
「え? ああそうか!!! えい…ああ!!?」
八角形の鏡を覗き込んだ小猿が声を上げた。
「やば…やばやばやば!!! 酷いことになってる!!!」
「酷いってどんな!!?」
「とにかく凄い。凄いんだ、何もかも…」
俺の語弊力のなさは…自他共に定評はあるが、小猿ほどではないと…信じたい。
小猿の言葉からは、まるでさっぱり、状況が判らねえ。
「ああ、もう!!! 俺にも見せろ!!!」
見るが早しと、苛立った俺も覗き込んでみたが…何も見えねえ。
俺が見ている景色と同じで。
ちっとも事態が把握出来ねえじゃないか!!