シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
 

「あれ、前と同じモヤイ像前の待ち合わせなんだけれど、15分過ぎたのに…紫茉ちゃん来ないな」


待ち合わせの奴、通り過ぎていく奴。

休日のせいか、すごい人混みだ。

皆遠目だろうが近目だろうがこっちちらちら見て。


目、目、目…。


いつも櫂に張り付く俺としては、如何に慣れきっている風景だとはいえ、櫂がいない今ならば、どうせ橙色に染まった俺を物珍しく見ているか、蔑んでいるかだろう。


はたまた――

芹霞に向けられている眼差しか。


そう思えばイライラする。

誰の許可とって芹霞を見てるんだよ。

俺と芹霞は手繋いでいるんだぞ!!?

"恋人繋ぎ"してんだぞ!!?


「何ですぐ喧嘩売るの、あんたは!!!」


ドガッ。


脛を蹴りつけられた。


こっち睨み付けてる芹霞。


「恋する少年はデリケートなんだぞ!!? もっと大事に扱えよ!!?」


ぴょこぴょこ跳ねながら、怒鳴る俺。


「また"恋する少年"シリーズの再開!!? 大体、飛んできたフライパン頭で受けても、ピンピンしている大男が何を言う。それより」


"恋する少年"…"それより"程度かよ。


本当に、芹霞に俺の心伝わっているんだろうか。

とりあえずは…切実さが伝わっていねえことだけは確かだ。


「紫茉ちゃんの携帯が繋がらない。"電源切れてる"アナウンスばかりで。どうしたんだろう。……。……。まさか、またハチ公口に?」


少し考える様子見せた芹霞は、やがて俺の手を引いて反対口に歩いて行く。


「……何そのむくれた顔」

「いや……手、繋いではいるんだけどよ」

「だから何?」

「……。犬の散歩みたいで、ラブラブに見えねえ気が…」

「……。……嫌なら離すよ?」


俺はぶんぶん頭を横に振った。


つーより芹霞。

否定くらいしろよ!!

してくれ。

これ以上、凹ませないでくれ!!



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