シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
「櫂、何? 紫茉ちゃんが何?」
芹霞は判らなかったらしい。
「ああ、七瀬が…朱貴の弱点だということさ」
「???」
あの男も苦労しているというわけか。
七瀬の行く先々に現われて、拉致同然に連れ帰る。
判りにくい反面、極端すぎて判りやすい行動。
加えて――。
時折彼女に向ける…その視線に混ざるやるせなさ。
芹霞と友情を深め合う姿でさえ、苛立った目を寄越していて。
俺だって…似たようなものか。
何処まで隠せているのか判らない。
今なら、もう…隠す必要もないわけで。それでも全て伝わらない、俺の想い。
忍ぶ辛さと…
自分の不器用さと…
…相手の超鈍感さ。
なあ、朱貴…。
どんなに高飛車ですました顔で、意味ありげな立場をひけらかそうとも。
親近感くらい…湧いてもいいだろう?
「芹霞。俺から離れるなよ」
朱貴の領域が遠ざかるにつれ、次第に強まる瘴気。
俺の右手は芹霞と繋ぎ、左手は緑の光。
本当は…芹霞を連れ歩きたくはないけれど。
玲の頼み事だ。
あいつは…芹霞を俺の保険にしているんだろう。
芹霞が居る限り、俺は無茶をして…"決行"しないと。
聡い奴だ。
「……」
ふと…繋いだ手が気になった。
「……何?」
俺は…繋いだままの芹霞の手を引き寄せ、
その手の甲に唇を寄せた。
「ちょちょちょ!!!?
そこは…ええ!!?
櫂は玲くんと間接キ…「違う!!!」
思わず怒鳴った俺。
そして――
「痛いっ!!!」
そこに俺は歯をたてた