シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
 
そしてまた、うんざりするような改札口の人混みに混ざる。


壁に貼られているのは、色取り取りのポスター。


その中でも数が多いのは、『黄幡会』と書かれた学習塾の案内。


しかも妙なことに、その下には小さく『宗教法人 黄幡会』とある。


何処ぞの怪しい宗教が、学習塾なんか経営して…がっぽり金でもせしめようとしてるんだろう。


此の世は救いより、金かよ。


世も末だ。


やがて出てきた有名待合場所。


衝撃を受けたのは、ハチ公の銅像が包帯ぐるぐる巻きだったということ。


立て札と箱が置いてある。


『忠犬ハチ公は、ご主人庇って怪我をしました。貧乏なんで病院に行けません。可哀相だと思ったら、どうかお恵みを 渋谷ハチ公』


何処をどう見ても胡散臭い。


そういえば遠坂が、7不思議の1つとしてハチ公像が壊されている云々…言ってたけど、あれは本当の話だったらしい。


完全に修復とまでいえねえ細やかな傷痕が、包帯からはみ出ている。


それがまあ…痛々しさは感じさせるかもしれねえけれど、今時何処にこんないたずらに金払う馬鹿が――


「ぐすん、可哀相。ハチ公…元気になってね」


チャリン。


「お前かよ!!?」


思わず叫んでしまった。


「煌も入れなさいよ。"仲間"が苦しんでいるんだよ?」


切なる潤んだ目でそう訴えられた。


「"仲間"って何だ!!? 

俺はワンコじゃねえッッ!!」


そう叫ぶけれど。


「煌? ワンワンキャンキャン泣いているんだよ? 煌は冷たい子じゃないよね!? 困っている"仲間"は見捨てないよね!?」


「人の話を聞け!!! 俺はワンコじゃ…」


「仲間見捨てる非情な子、絶交」


チャリン。


俺も小銭を入れた。




「お前、馬鹿?」



突然――

やや高めの男声が聞こえた。

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