シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
清楚に短く切り揃えられた、藍鉄色の髪。
同色の凛とした強い光を宿す瞳。
まだあどけなさは残るとはいえ、吊り上がり気味の切れ長の目といい、彫り深い品ある顔立ちといい…将来有望な若武者風。
櫂や玲とはまた違う、育ちのよさを感じる。
着ている制服は…数日前、桐夏の学園祭で見掛けた、桐夏の姉妹校である品川の桜華学園のもの。
緑色のチェックブレザーは、中等部だと櫂から教えられた。
つまり。
桜華中等部の…160cmに満たない、桜よりも小さいチビッコが、肉まんかじりながら花壇の縁にふんぞり返って座っていて、俺達を冷ややかに眺めていたんだ。
「ははは、ワンコ!!! 彼女にワンコ扱いかよ!!!」
冷ややか、じゃねえ。
大嘲笑だ。
"彼女"
一瞬、俺の顔が弛みそうになったけど、きりりと引き締めた。
同時に――。
俺のコメカミにぴきぴきと、青筋浮き立つのがよく判る。
俺、こいつとは初対面で。
全然知らない奴で。
猿、だ。
木に上って赤い尻叩いてきゃっきゃと笑う、憎たらしい猿にしか見えねえ。
「ワンコだあ!!?
お前の目は腐っているのか、小猿!!」
小猿の肉まん取り上げ、凄んだ顔で怒鳴れば、
「さ、サルだあ!!?
お前、誰に物言ってる!!!」
若干怯んだ顔を青くさせ、それでも尚も減らず口。
「あ、紫茉ちゃんから連絡来た。はい、もしも…」
「おい、小猿!!! お前は"失礼"という言葉をしらないのか!!!」
「それは俺の台詞だ!!! 肉まん返せよ、下郎が!!!」
「え、何処? ごめんよく聞えなくて…」
「下郎!!? 今、何時代だと思ってるんだよ!?」
「平成に決まっているだろ、馬鹿ワンコ!!!」
「ねえ煌、ちょっと静かに…」
「馬鹿だと!!? お前何様だ!!? 年上を敬え、小猿めが!!!」
「ワンコ風情が何を偉そうに!!!」
「――…静かにしろッッ!!!
イヌとサル――
この…畜生共がッッ!!!」
ドッカーン。
芹霞の怒りの雷に、俺と小猿は縮こまった。