シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
 

真後ろで――

何かと何かがぶつかる、大きな音がした。


あたしはそれに気づかないフリをして、走り抜ける。


あたしだって、役に立ちたい。


あたしだって、煌を見つけられる!!!


頭には、固定観念のように…それだけしか思い浮かばず。



「桜!!! 芹霞につけッッッ!!!!

煌を――連れて来いッッッ!!!!」



途端、視界が黒色に染まり…

動き出した銀色を覆い尽くす。



「芹霞さん、走りますッッ!!!!」



あたしは、桜ちゃんに腕を掴まれて引き摺られるようにして前方を走る。


あたしは、桜ちゃんの出現に吃驚して。


「な、何であたしにつくの!!!? 桜ちゃん、櫂を…櫂の方を守って!!!!」


しかし桜ちゃんは何も言わず、剣呑な眼差しを前方に向けたまま。


「桜ちゃん、櫂を守ってよッッッ!!!!」


「あの男に…勝算があるとすれば…櫂様だけだ」


「え?」


「この瘴気を味方につければ…少なくとも時間稼ぎは出来る。櫂様は…捨て身で僕に託した。それだけ、人手が足りないんですッッ!!!」


桜ちゃんはそう言って。


「あんな馬鹿な男でも、戦力に欲しい。玲様を…僕達は死なせるわけにはいかないから!!! さあ、早く行きましょうッッッ!!!」


そして桜ちゃんは、片手から糸を放ち、


「芹霞さん、僕に捕まって下さいッッ!!!

放送室は隣校舎、高等部2階!!!

抜けた天井から、上に上がりますッッ!!!」



言うが早く…まるで飛ぶようにして身体が浮き上がり、慌ててあたしは桜ちゃんの片腕にしがみついた。


凄い。


糸なのに…どうしてこんなにゴムみたいに伸縮性があるんだろう。


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