シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
「ええええ!!!?」
思わずあたしは声を上げた。
「早く煌を連れないと!!! そんな処を彷徨(うろ)いている時間ないんだって!!! 櫂だって、玲くんだって…危険なのに!!!」
そして桜ちゃんに言った。
「煌だって、ちゃんと小猿くんと放送室に行き着いたんだ。ちゃんと道はあるはずで…『だから、黙ってろ、ワンコッッッ!!!』
再び――
耳が麻痺するような、甲高い音が鳴り響いた。
『大丈夫だって、そのマニュアル通りにスイッチ入れたから、これで音が響いているはずだ』
『本当かよ? どうも胡散臭いよな』
『大丈夫だって!!! おい…こっちのスイッチでいいんだよ、違うって、ほら!!! 小猿が間違っている…うわっ、お前何押した、何だよこれッッ!!!?』
突如響いてくる音楽。
『げえええ!!!? Zodiacじゃねえか!!! 何だよ、何でこんなの流せる状態になってるんだよ、桜華!!!! 消すのは何処だ!!? 止める方法は!!? 此処か、此処か!!?』
『ワンコッッ!!! 触るな、火吹いてる!!! そんな音楽の為に、放送出来なくなったら困るだろうがッッッ!!! そのままでいい、そのままで行くッッ!!!』
なにやっとる、あの畜生コンビ。
「後で…吊し上げだ…」
桜ちゃんの手の骨がボキボキと鳴り…物騒すぎる声が響いた。
『ああ、もう!!! 始めるぞ、恐ろしいくらいに《妖魔》の気が酷いから、さっさと祓わなきゃやばいんだって!!!』
《妖魔》?
祓う?
そして、明瞭な…澄んだ声が響いてきた。
『東海の神、名は阿明。西海の神、名は祝良――…』
声に威力を持てるのは、言霊というものを操る久遠の得意分野のはずだけれど…小猿君の声も、久遠と同じように…不思議と何かの"力"を感じずにはいられなかった。
闇に呑まれず、静かに静かに拡がりを見せる小猿くんの声は。
まるで音叉のような共鳴器具のように、闇を震わせ…神秘的な声の領域を独自に構築しようとしている。