シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
様々な気配に包まれた校舎は、もうぼろぼろだった。
学び舎としての機能は果たせず、きっと開店休業だろう。
制裁者(アリス)、警護団。
本来なら、手を結ぶことなどありえない2つの集団。
複数における刺客は、私の…私達の妨げにはならない。
皇城翠も、体術の心得はあるようで…私達の足を引っ張ることはない。
しかし苛立つのは、校内放送。
未だ流れ続けるZodiacの曲。
この旋律を耳にするだけで、全身に嫌悪感が芽生える。
それは私だけではないようで。
「畜生…!!! ぶっ壊してくればよかった!!! 何が嬉しくてこんなBGM――…櫂!!?」
その時、ぴくんと体を震わせた煌が、突如床に偃月刀を突き刺し、外気功を放つ。
「小猿、芹霞頼む!!!」
今まで片腕に抱いて守っていたモノを、ぽいと皇城翠に託し、崩れた天井と…敵の骸諸共、階下に落ちた。
自然落下ではなく、それが故意的だと気づいたのは、階下の…橙色の動き。
まるで疾風のように動き…偃月刀で、櫂様を押していた銀色の氷皇の背に切りつけていたから。
私も続いて降り立てば、
「さすがだな、番犬」
不安定な…傾斜の姿勢を正した、満足気に笑う櫂様の声が響く。
煌の…番犬としての"危機察知"能力は、私よりも優れている。
それまでの…声による馬鹿げた漫才具合を披露していた姿など、微塵も見られないまま、あの男…結局はイイトコ取りで、何だか無性に腹立つけれど。
私は、裂岩糸を絡ませ…櫂様を守るように、煌の横に立つ。
後ろで、皇城翠と芹霞さんの気配がした。
「櫂様、遅くなりました。お怪我は?」
「ああ、大丈夫だ。瘴気が突如引き…戸惑った隙を狙われていた。俺はいい。心配なのは玲の方だ。音が…鳴り止まない」
これだけの破壊音が鳴り響いているのであれば、直接攻撃されていないにしても…玲様の身体に間接的に及ぶ物理的な被害が心配だ。