シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
 
その意図は櫂様に伝わったようだ。


「芹霞、来い!!!」


芹霞さんが櫂様の腕に吸い込まれるのを見て、少しだけ…私の心が泣いた。


「小猿くんも!!!」


芹霞さんが手を伸ばすと、皇城翠はふるふると首を横に振った。


「俺は…葉山を守る!!!」



「「………」」


芹霞さんと櫂様が、神妙な顔をして動きを止めてしまった。


「私のことはいい、煌についていろ!!!」


煌が…また"あれ"に苛まれないうちに!!!




「俺だって――

惚れた女を守るんだッッ!!!」



「惚れた女……」



――って、誰のことだろう。


女は、芹霞さん、七瀬紫茉、遠坂由香しかいない。


ああ、考えている余裕などない。


元より、皇城翠の恋話など興味すらない。


銀の男が、こちらに来る。


「ならば早くその者の元に行け!!!」


すると皇城翠は私の横に立った。


「ワンコに言われたんだ。当たって砕けて突き進めって!!!」


だから何故、此処に居座る!!?


「う、わあ…煌、煽ってどうするの。っていうか…もしかして、小猿くんを泥沼に落としているのは、あたしと煌?」


更に理解し難い芹霞さんの声が聞こえた時、


「櫂様、早く!!!!」


銀の男が繰り出した蹴りを、私は糸の結界で受けた。


「判った!!! 此処は頼むぞ、桜!!!!」


「はいっ!!!」


びりびりと、身体全体に激しい衝撃が走る。


「お前も早く行け!!!」


皇城翠は動こうとしない。


「俺だって…守るんだ!!!!」


「煌につけッッ!!!」


「俺はライバルと馴れ合う趣味はねえええ!!!」


また訳が判らないことを。


ああ――

私はこの煩い男を守らねばならないのか!!!?


どうして…私に手間をかけさせるのか。


人間らしい、状況判断をして欲しい!!!

< 829 / 1,192 >

この作品をシェア

pagetop