シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
その意図は櫂様に伝わったようだ。
「芹霞、来い!!!」
芹霞さんが櫂様の腕に吸い込まれるのを見て、少しだけ…私の心が泣いた。
「小猿くんも!!!」
芹霞さんが手を伸ばすと、皇城翠はふるふると首を横に振った。
「俺は…葉山を守る!!!」
「「………」」
芹霞さんと櫂様が、神妙な顔をして動きを止めてしまった。
「私のことはいい、煌についていろ!!!」
煌が…また"あれ"に苛まれないうちに!!!
「俺だって――
惚れた女を守るんだッッ!!!」
「惚れた女……」
――って、誰のことだろう。
女は、芹霞さん、七瀬紫茉、遠坂由香しかいない。
ああ、考えている余裕などない。
元より、皇城翠の恋話など興味すらない。
銀の男が、こちらに来る。
「ならば早くその者の元に行け!!!」
すると皇城翠は私の横に立った。
「ワンコに言われたんだ。当たって砕けて突き進めって!!!」
だから何故、此処に居座る!!?
「う、わあ…煌、煽ってどうするの。っていうか…もしかして、小猿くんを泥沼に落としているのは、あたしと煌?」
更に理解し難い芹霞さんの声が聞こえた時、
「櫂様、早く!!!!」
銀の男が繰り出した蹴りを、私は糸の結界で受けた。
「判った!!! 此処は頼むぞ、桜!!!!」
「はいっ!!!」
びりびりと、身体全体に激しい衝撃が走る。
「お前も早く行け!!!」
皇城翠は動こうとしない。
「俺だって…守るんだ!!!!」
「煌につけッッ!!!」
「俺はライバルと馴れ合う趣味はねえええ!!!」
また訳が判らないことを。
ああ――
私はこの煩い男を守らねばならないのか!!!?
どうして…私に手間をかけさせるのか。
人間らしい、状況判断をして欲しい!!!