シンデレラに玻璃の星冠をⅠ


銀の男からの第2撃の足が来る。


空気を裂くような…刃の威力。


宙で身を翻した私は、素早く多くの糸を1本に編みこみ、長い鞭のように銀の男に振るう。



しかし砕けたのは床だけで、そこには男の姿はなく。


…宙に居る私の目の前に現れた。


早い。


迅速すぎる動作。



身を捩ってその攻撃をかわし、糸の鞭を振るえど…捉えるのは空ばかり。


やがて鞭の先端を手掴みにされ…逆に私が壁に叩き付けられる。


表情が崩れない銀色。


真紅の邪眼は、炎のように赤く。


赤――。


だけど、緋狭様程ではないんだ。


気配が掴めるだけ、状況は悪くはなく。


感じればいい。


いつもの修業のように…緋狭様の気配を追った時のように。


心眼。


集中して、相手の動きに同調すれば、出来ないことはないと教わった。


相手の気に自分を合わせ、同じ速さで動けば…必ず突破口は開く。


緋狭様程ではない。


朱貴程ではない。


ならば。


恐れるに足らない。


――一瞬。


チャンスは訪れた。


敵の手が伸びる寸前で身体を逸らした私は、男の背後に振り上げた足を、横に身を捩りながら背中にくらわせた。


同時に上から被さるようにして、両手指を組んだ手を、前傾姿勢となった男の後頭部に落とし――床に叩きつけた。


そして私は、素早く男を糸で縛り上げ――両手で一気に切り裂く。


手ごたえあり。


皇城翠が、だらしなく口を開けたままこちらを見ていて。


「強ぇ……」


「……!!?」


妙な気配を感じた私が、後方に振り向けば。



「どうした? お前も使っただろう、幻術を…」


そこには。


切り裂いたはずの銀色の男が、薄く笑っていて。


私は、ぎりりと歯軋りをした。


そう簡単には…殺られてくれないらしい。

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