シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
・深層 玲Side
玲Side
*************
「もしも、俺が危険だと判断したら、強制覚醒させる。いいな?」
朱貴の声に返事をした僕。
そして――
「玲、行くぞ?」
隣に居る紫茉ちゃんの…囁くような声を契機に、鼻に漂う甘い香りに意識がまどろんでいく。
多分その瞬間、僕は旅立ったのだ、夢の世界へ。
目を瞑ったのだから、暗闇の世界が広がっていると思ったのだけれど…本当に眠ったのかどうか判らなくなる程、現実味を帯びた明るい景色が展開されていた。
目まぐるしく動く景色。
言葉として理解できない喧騒。
音声を残したまま、映画を早送りして眺めている感覚で。
五感には捉えられるけれど、認識ができない…そんな世界だった。
僕の体感する"夢"はこんな忙しさはなく、僕を主人公として廻る世界だったから、僕を取り残して動くこの世界が本当に"夢"なのか、それとも"異次元"なのか…判断がつかず、不安になってしまった。
そして、そこで初めて質問を向けるべき紫茉ちゃんがいないことに気づいた。
「紫茉ちゃん?」
何度か呼ぶと、空間が陽炎のように僅かに揺らぐ。
『玲、聞こえている。あたしはこの世界と同化した"傍観者"だから、お前のような人型はとれない。だから声だけでお前に接することになるが、許せ』
紫茉ちゃんは僕を此処に連れた者なれど、俯瞰に徹する役目は"神"にも近い。
だが、眠る前に言っていたように…"判断が出来ない"のであるならば、恐らく彼女が内包している僕の思考も読み取れていない、ただの導き手と考えたほうがよさそうだ。
別次元を垣間見る能力は、僕にも通ずるものがあるのかもしれない。
電脳世界。
0と1で構成される世界を語る僕に、常人は理解できないかも知れないけれど…そこには僕の主体性はなく、僕はただ流されて傍観する側の人間で。
そう、世界に許可されて始めて存在できる。
その力を分けてもらうことが出来る。
僕が創った世界ではない。
既に創られている世界に僕は居るだけなんだ。
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「もしも、俺が危険だと判断したら、強制覚醒させる。いいな?」
朱貴の声に返事をした僕。
そして――
「玲、行くぞ?」
隣に居る紫茉ちゃんの…囁くような声を契機に、鼻に漂う甘い香りに意識がまどろんでいく。
多分その瞬間、僕は旅立ったのだ、夢の世界へ。
目を瞑ったのだから、暗闇の世界が広がっていると思ったのだけれど…本当に眠ったのかどうか判らなくなる程、現実味を帯びた明るい景色が展開されていた。
目まぐるしく動く景色。
言葉として理解できない喧騒。
音声を残したまま、映画を早送りして眺めている感覚で。
五感には捉えられるけれど、認識ができない…そんな世界だった。
僕の体感する"夢"はこんな忙しさはなく、僕を主人公として廻る世界だったから、僕を取り残して動くこの世界が本当に"夢"なのか、それとも"異次元"なのか…判断がつかず、不安になってしまった。
そして、そこで初めて質問を向けるべき紫茉ちゃんがいないことに気づいた。
「紫茉ちゃん?」
何度か呼ぶと、空間が陽炎のように僅かに揺らぐ。
『玲、聞こえている。あたしはこの世界と同化した"傍観者"だから、お前のような人型はとれない。だから声だけでお前に接することになるが、許せ』
紫茉ちゃんは僕を此処に連れた者なれど、俯瞰に徹する役目は"神"にも近い。
だが、眠る前に言っていたように…"判断が出来ない"のであるならば、恐らく彼女が内包している僕の思考も読み取れていない、ただの導き手と考えたほうがよさそうだ。
別次元を垣間見る能力は、僕にも通ずるものがあるのかもしれない。
電脳世界。
0と1で構成される世界を語る僕に、常人は理解できないかも知れないけれど…そこには僕の主体性はなく、僕はただ流されて傍観する側の人間で。
そう、世界に許可されて始めて存在できる。
その力を分けてもらうことが出来る。
僕が創った世界ではない。
既に創られている世界に僕は居るだけなんだ。