シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
七瀬は可愛いよりも綺麗系。
世俗に染まっていない純な感じがする。
背筋はぴんとして、小猿よりも遙かに凛々しい。
確かに"美少女"だけれど、それでも芹霞には敵わねえ。
好みのタイプがどうのっていうんじゃねえ。
俺はこの七瀬っていう女見ても、まるで動く心がねえらしい。
「これからよろしくな、煌」
さばさばして、悪い印象はない。
更に俺みてもびびらず、嘲らず、真っ直ぐ目を見てくる処なんか、すげえ肝が据わった女と感嘆してしまうけれど。
"恋人繋ぎ"なんだ、俺と芹霞は!!!
猛犬注意って何だよ!!?
しかも。
握手はいいけれど、何だよその…
"お手"のように上に向けられた手の平!!
「ほら翠。お前も自己紹介!!!」
再び七瀬から拳骨もらい、目の前の小猿は渋々口を開く。
「皇城翠。中3」
「挨拶は人の目を見ないか、翠。煌に失礼だぞ!!?」
おお、何だか七瀬は話が判る。
「ああ、いいよいいよ、紫茉ちゃん。あたしは神崎芹霞、よろしくね、小猿くん」
「!!! 俺、名乗っただろ!!」
「愛称よ愛称。君は小猿くん」
「ははは。翠、お前はサルか。それはいい。いつもキーキー口だけは達者だもんな。サルか、あはははは」
七瀬という女、結構笑い上戸らしい。
"サル"が彼女のツボに嵌ったらしく、終いには蹲って声もたてずにただふるふると身体を震わせて笑っている。
当然小猿は不機嫌そうで。
その時――だ。
俺の本能的な警戒度を高めるような、悍(おぞま)しい視線を感じたのは。