シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
憎悪にも似た視線。
純粋なる殺気。
俺と同時に反応したのは七瀬だった。
今までの笑いを見事に消して、目を細めて辺りを窺う。
何だ、この女…。
と思いきや、その気配の先は掴めないようで、気のせいだと笑って済ませてしまうあたり…凡人に毛が生えただけのものか。
「自警団だ…」
芹霞が呟いた。
「煌の橙色が目立ち過ぎか。天然なのになあ。ピアスも生活必需品だしなあ」
「何のことだ?」
依然俺は視線の主を見極める警戒心は解かぬまま、芹霞に目で促された先を見つめた。
こちらに向かってくる、白い制服姿の男女のことか?
「ああ、確かにやばいな、このままだと」
「だから、俺が一体何だって?」
駄目だ。女2人は完全俺を無視して、顔を強張らせている。
「…翠。頼む。このままだと煌が目をつけられる」
やがて七瀬が小猿にそう言うと、小猿はそれはとてもとても――話の筋がまるで見えていねえ俺さえ、かなりカチンとくるような…そんな嫌そうな顔をした。
「お前だけが頼りなんだ」
その七瀬の言葉に、突如顔つきが変わる。
そしてすたすたと、それは毅然たる侍のように。
白い制服姿の男女に近寄り、何やら話しかけた。
「翠はな、単純なんだ。"頼りにしている"という言葉に滅法弱いから、手がかかって困る時は使うといい」
俺が芹霞に懐柔されているように、あの小猿も七瀬に懐柔されていると言うことか。