シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
――――――――――――――――――――――――――――……
「ああ…ああああ…痛い、痛い、痛い…」
理事長室に入った時、熱にうなされた七瀬が悲鳴を上げて泣き出した。
朱貴の肩で、ガタガタと震える七瀬の身体。
いつも男言葉を使いながら、凛として毅然と佇む女だから、そう叫ぶのは異常過ぎる光景で。
芹霞が心配して七瀬の元に駆け付け、その手に触れようとすると、ますます七瀬は痛いと叫んだ。
「熱が…高すぎるんだ」
櫂が目を細めて言った。
「あああ…お父さん……お母さん…」
熱で…よっぽど心が弱っているのだろうか。
記憶喪失だと聞いたが…その記憶にうなされているのだろうか。
「やめろやめろやめろ!!!」
それはまるで、電話で聞いた玲の声のような悲痛さで。
だけど、"狂い"ではない。
身体の悲鳴なだけだ。
「こいつはいつもこうしてぶっ倒れる。特に夢で危険な目にあうとほぼ必ず。心配するな」
朱貴が薄く笑って、両手で七瀬を抱き上げた。
「治療できるのは…俺だけだ」
まるでそれを誇りに思っているかのように、嬉しそうな表情を見せた朱貴。
少しだけ…甘さが滲んだと思ったのは、気のせいだろうか。
いつもの七瀬への虐待思えば、何でそんな表情になるのか謎だ。
ドS妄想でも暴走しているのだろうか。