シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
理事長室には、重い沈黙が流れた。
俺は玲をソファに横たえると、即座に芹霞と遠坂が玲の傍らに座り込み、玲の顔を見つめた。
玲が心配で、玲が助けたいのは誰もが強く願っていること。
殊更櫂は――
「――くそっ!!!」
自責の念で一杯なのだろう。
自分自身に怒りをぶつけるように、憤然とした言葉を吐いて…天井を振り仰いだ。
助けたいのは山なのに、助けられる術が俺達の手にないのがもどかしくて。
せめてこの世界の何処かに玲がいるのなら駆け付けることも出来るだろうが、"夢"などという妖しげな世界にいる玲を、どうやれば俺達は迎えにいける?
せいぜい寝込んで、自分本位な夢を見て、普通に目覚めて終わりだろう。
"夢"を世界構成出来るのは…七瀬だけなんだ。
俺達は、ただこうしてやきもきして、状況を見守るしかねえ。
思う。
こんな状況続けば、きっと玲の身体は…蝕まれる。
今きっと玲がいるだろう、狂気によって。
――頼むぞ、煌。
冗談じゃねえぞ、玲。
それだけは嫌だぞ、俺。
「ねえ…小猿くん」
突如遠坂が、神妙な声を出した。
「七瀬のように、夢に潜れる力っていうの…皇城には、他に出来る人、居るのかい? いや…居るんだよね?」