シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
「周涅は…見た目ちゃらちゃらした守銭奴だから、昔…皇城本家で優しかった時の兄上に、何であんな男が兄上直下の大三位なのか聞いたことがあるんだ。そしたら、現実でも"夢"でも相手を捻じ伏せられる唯一の男だからって、笑って言われてさ。
紫茉はそれ、知らないけど…紫茉と兄妹なら、周涅だって紫茉と似たこと出来るだろうし。皇城大三位となれば、何が出来たっておかしくないし」
小猿の面差しは真剣で。
そして強い警戒と不快感が見て取れた。
好感度が底を突き抜けて下降している。
そこまでどうしようもない男なのか。
七瀬は…しっかりしているようなのに。
「――俺!!! 朱貴に聞いてくる!!! 朱貴なら、多分周涅の居場所判ると思うから。前…夜中に携帯で話していたの、聞いたことあるんだ」
小猿が決意したような顔を、俺達に向けた。
「恐らく皇城関係の場所にいると思う。もしかして鎌倉本家に居るのかもしれないけど…俺、一応次男で、神奈川ならそこそこ顔きくと思うし…必ず引き合わせてやるから。胡散臭い男だけどさ」
その凛とした面差しに、俺達は返す言葉がなく。
「紫茉だって身体張って、朱貴だって…あの赤い女相手に戦ってたんだ。俺は…俺はさ、落ちこぼれで…力出してもまるで駄目駄目で。
紫茉と玲の身体を危険に曝し…玲が夢の世界に閉じ込められたのは、俺の制御できない力が原因だ。まだ未熟なのに、大地だ風だ水だと…調子に乗って符呪使いまくったから。もっと制御できるようになってから使うようにと…朱貴に言われていたのに」
悔しそうに唇噛んで、小猿は俯いた。
「小猿。地が傾く地震や、雨や風…お前の力だったのか?」
驚愕した俺が問いかけると、小猿は俯いたままこくんと頷いた。
桜が…神妙な肯定の視線を投げかけていた。
あの威力はさることながら。
おちこぼれ小猿の力が――
朱貴と俺の二重結界をものともせず、貫通しながら攻撃をしたというのか。
何だよ、この猿。