シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
俺は思わず、繋いだ芹霞の手に力を込めた。
やらねえぞ、芹霞は。
こんな人混みの中、あの存在に気付いているのは俺1人。
俺は歯軋りをする。
どうする?
戦闘になったら…ここでは人が多すぎる。
移動するか?
だけど榊をやった奴、俺1人で何とか出来るか?
俺の片手は、自然とピアスに触れていて。
「…ねえ…、あの蝶々が飛んでる」
芹霞が固い声を出してきた。
「蝶々?」
七瀬の訝る声に、芹霞が更に訝った声を出す。
「紫茉ちゃん見えないの!? 黄色い蝶々が、1匹、2匹…うわあ凄い大群で…きゃああの人に!!!」
芹霞が真っ青な顔で指さした1人の女生徒。
俺も七瀬も…恐らく周りの奴も。
蝶の姿なんか目にすることは出来ず。
「ひいい!?」
「芹霞、おいしっかりし……はあ!!?」
七瀬の顔が強張って。
芹霞が指した女生徒が、突然絶叫を上げて目を押さえて倒れだした。
周りの奴らが異変に気付き、その女を抱き上げ更に声を上げる。
眼球が――
なかった。
まるで榊のように。
「蝶が…蝶々が、
また食べちゃった…」
見えているのは芹霞だけ?