シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
「お前…凄えよ。制御できれば…どれだけの力もつよ?」
思わず感嘆の声を漏らした俺に、小猿は渋い顔を向けてきた。
「嫌味かよ。まあ…嫌味でもいいけどさ。実際、どうせ役立てない中途半端な力しかないんだし…」
いじけてしまった。
「そうじゃねえよ。なあ…櫂。こいつの力、久涅に効果ねえかな」
櫂は腕組みをして、目を細めた。
「こいつの力、結界を抜けたんだ。力の貫通化…。だったらさ、無効化自慢の久涅にこいつが力を放てば…どうなるんだろ」
俺の吐き気が止まるのも…小猿の"貫通化"のおかげだとしたら?
…何を貫通されているのかは判らねえけれど。
「……。確かに、今思い出せば…突如保健室を襲った不可解な自然現象に、結界を張ってかわしていた緋狭さんとて、いくつかの攻撃は掠っていた。
緋狭さんが引いたのは、蝶だけの存在ではないのかもな」
小猿は…希望となるだろうか。
櫂にも…俺にも。
「貫通化…だったら何故、翠の式神から攻撃を受けた際、私達はそれを吸収したり弾いたり出来た?」
それまで黙っていた桜が、訝しげな声を漏らす。
「不安定…なんだろう」
櫂が、苦笑した。
「――原石、か。磨こうとしてこなかっただけで」
磨いても光らないかも知れねえ、得体の知れぬ石。
それでも所々は、強く光彩を放っている。
それを石全体のものと捉えるか、或いは付着されたような一部分と捉えるかは…俺達の受け方次第なんだろう。
もしも――
とんでもない力を制御できるようになれば。
味方となれば非常に心強く、敵になればかなりの脅威。
両刃の剣。
気づいていないのは、本人だけというのが滑稽だ。