シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
小猿は、自分の何を言われているのか理解出来てねえみたいで、挙動不審にも思える程、忙しい動きで俺達を見ていた。
俺は笑いながら小猿の頭に手を置いて、柔らかい藍鉄色の髪の毛をぐしゃぐしゃにする。
やはり予想通り、キーキー鳴いた小猿に、俺は言った。
「よし、小猿。俺も朱貴の所に行く。どんなに拒否られても、土下座して朱貴の靴を舐めてでも…絶対周涅の居場所を教えて貰う。どんなことをしても七瀬に頼らない方法、絶対聞き出す」
それに、躊躇いはなかった。
玲は――
櫂の為に土下座して朱貴に嘆願した。
玲は終始にこやかな笑顔見せるけれど、基本…櫂にも通じて誇り高い。
それをあいつの…"我慢を強いた"過去が、隠しているだけ。
付き合いが長くなれば判るんだ。
内心は、激情を秘めた男だということ。
その玲が、進んで屈辱とも思える姿勢をとった。
その玲が、嫌がる女と共に残った。
自分を犠牲にしてでも、相手を救いたいと思うのは、お前だけじゃねえ。
俺だって、喜んでお前の為にそれくらいしてやるさ、玲。
それは個人の犠牲精神がどうのという問題じゃねえ。
俺達が培ってきた絆の強さだ。
「煌、あたしも行く」
「ボクも」
ほら、誰も彼もが俺に同調する。
それくらい、お前は愛されているんだよ、玲。
お前の居るべき場所は、冷たい孤独な世界じゃねえ。
温かい…こちら側の世界だ。
お前は、太陽の元にいるべき人間なんだよ。