シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
 
隣のくせにやたら距離感がある学園長室。


自己顕示欲が酷く強そうなイボガエルが、なんでこんな端っこのドアを許したんだろう。


嫌われ者故に…追いやられたんだろうか。


そんなことを思いながらドアノブに手をかけようとすると、ドアは薄く開いたままだった。


朱貴は余程慌てていたらしい。


しかし足を踏み込めば。


何だ、この金色ピカピカ尽くしは。


成金色で染め上げられた内装は、この部屋の主を象徴しているようだ。


まあ…イボガエルの銅像建てるくらいだから、違和感ねえかもしれねえけど…完全にこいつ、学園長室を私物化してねえか?


「いい噂は聞かない嫌われ者の男だよ。ここの学園長。女生徒に色目使って、強姦まがいで手を出すらしいぜ?」


小猿が嗤った。



「裁判沙汰になるのを金で解決しているらしい。どれだけ金、あるんだよって感じだよな」


「モテない男の行く末は、そんなものなら、絶対そうなりたくねえな、俺…。一応矜持あるし」


というか、今俺…芹霞以外の女に手を出してねえし。


出す気もねえし。


「ワンコ…。もしかして、お前の中での自分像は、この学園長並に酷いのか?」


小猿が変なことを言い出して。


「あいつよりはマシだと思うけど…似たようなもんかもな」


「ワンコ…お前、やっぱり馬鹿だわ」


哀れむような顔つきを向けられた。


「中坊に言われたかねえよ。突然変異するかもしれねえし、俺だって…」


ああ、外貌のこと言われるのは辛え。


「髪…黒い鬘かぶっても、取れって言われたし。余程酷い顔なんだよな」


「……」


小猿の哀れみは強まるばかり。


終わりだ終わりだこの話は。


気分が滅入って仕方がねえ。

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