シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
しかし、広い部屋だ。
小猿のあの大災害の攻撃に、損傷はなかったみたいだ。
理事長室のドアと距離あったのは…間取りから考えると、沢山の部屋があるのか。
学園長室に何でそんなに部屋が必要なんだよ。
「何処かに朱貴と七瀬がいるんだろう。よし探すぞ」
ここの主は不在なれど、大声上げるのは…何故か躊躇われた。
「なあ…覘くなって言われてたよな…?」
今更…小猿が戸惑ったような声を出す。
「七瀬の回復が遅くなるからっていうのが理由だろ? 七瀬は休ませて違う方法聞くんだから、別にいいじゃねえか」
「あ…そうか…」
案外すんなり納得した小猿と、まず端のドアを開ければ…
「「……」」
部屋を覗き込んだ俺達は絶句した。
内装が…やばい。
何だこれ…。
「何処の安っぽいラブホだよ。この甘い香り…安いムードの演出だよな。大体何だよ、あのでかい回転ベッド。今時ねえぞんなもん。なあ?」
同意を求めた小猿は、狼狽していた。
「お、おおお前…ら、"らぶほ"って…い、行ったことあるのか?」
「拘ってるトコはそこかよ。まあ…別に一夜限りのものだし、どうでもいい…それなりに清潔で安いトコしか知らねえけどさ」
「!!!! お、お前…いつから…そんな大人の世界を!!!」
「あ? お前の歳にはもう…何、お前行ったことねえの? まあ…坊ちゃんだしな」
「ええ、ええ!!? 世の人間は…もう行ってるものなの? というより、"らぶほ"って行くべき場所なのか!!?」
小猿の顔が真っ赤だ。
それを見た俺まで、熱が移ってくる。
「お、俺に聞くなよ。何か俺が変態みたいじゃねえか。使う使わないは当人の勝手だし、そんな場所使わなくたって、ヤれるもんだし!!!」
「!!! ヤる!!!!」
小猿は涙目で天井を見上げた。
「偉大なる兄上…。俺は…世情に疎かったようです。兄上は…知ってたんでしょうか、そのイロイロ…」
ぶつぶつ、ぶつぶつ。