シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
どうみても…深い口づけ。
それ以上に発展しそうな…独特な空気。
だけど七瀬は反応しておらず…気を失っているようだった。
だとしたら…朱貴は、意識無い七瀬を…?
「紫茉…紫茉……」
切なげに七瀬の名前を呼ぶ朱貴の声が、何だか…艶めいた喘ぎ声のようにも、朱貴らしからぬ…懇願するような哀しい声にも聞こえてくる。
「「………」」
俺達は、静かにドアを閉めて。
静かにドアから遠ざかった。
「「………」」
やがて俺が口を開いた。
「こ、小猿…お前、顔沸騰してるぞ」
「ひ、人のこと言えるか、馬鹿ワンコ」
別に…七瀬合意の"最中"を見たわけでもねえし、もっと凄いもんは世には存在する。
だけど――衝撃が凄すぎて。
だってあれ…どうみても愛が介在してるぞ?
だとしたら――
朱貴が七瀬に?
普段の様子からは、ありえねえ状況だ。
「「………」」
見てはいけないものを見た気分。
機織ってたツルを見た、爺さんの気分だ。
やけに見てしまったことに、後悔の念が湧き上がる。
きっとそれは小猿も同じだろう。
その時、別の人間の気配がして。
俺達は…先刻覘いた、端の部屋に身体を滑り込ませた。