シンデレラに玻璃の星冠をⅠ


「紫堂…ボクは、自ずと導かれないんだけれどさ」


それに説明を加えようとした時、突如ドアが開く。


煌と翠だった。


「交渉は上手く行ったのかい?」


煌は困ったような顔を見せて、頭を掻いた。


「いや…今、お取り込み中だから、まだ言えてねえ。さすがに…あれを割って入る勇気はなかった」


煌と…皇城翠が真っ赤になっていた。


煌はゆらりと動いて、俺の耳元に囁いた。


「出来てるな、あの2人。まあ…朱貴の…」


ああ、なんだ。


「片想い、だろ?」


「はあああ!!? お前気づいていたのかよ!!?」


「ああ。暴力行為は愛情の裏返しだろう。朱貴も否定しなかったし」


「紫堂も判っているなんて。うう…俺…ずっと一緒にいたのに…」


皇城翠が…涙声で項垂れた。


兄にも等しいと思っていた存在と、姉のように思っていた存在が、遠く離れた気がして…寂しいのだろう。


「おおっと、そんなことよりさ!! あの学園長、やばいんだ!!!」


「やばい?」


「ああ。回転ベッドとか鏡張りとか…一昔前のラブホだよな、あれ。安っぽいラブホ風に、改造した小部屋を多く作っててさ…」


その時、芹霞がすっと前に出てきた。


「"安っぽいラブホ風"。よく知ってるね、煌」


にっこり笑う芹霞の目は、まるで笑っていない。


「!!!!!」


褐色の目が恐怖に見開かれ、巨体が仰け反る。


「何か、随分詳しそうだね、そういうの…」


芹霞の目が据わっている。

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