シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
「ああ、紫堂くん。俺は大学生だけれど、ここの理事長にバイトで桐夏の教師をやらせてもらっているんだ。桐夏で出会っても、それは内緒にしていてね?」
そしてこの男。
やけに…慣れ慣れしいと思った。
「しかし噂に違わずいい男だよね~。桐夏生が君をほしがるのも判る気がするよ~」
俺は…初対面の人間からは一線を引かれる傾向にある。
俺が距離を詰めようとしないせいもあるのかもしれないが、とりあえず相手は俺に対して警戒距離を置く。
例外は確かにいるが…計都のような外貌の人間には、まず十中八九、俺は線を引かれるのが常だから。
「ふふふ、天下無敵の紫堂櫂くんの過去が、"ほわわわわーん"だったとは…誰も信じないよね~」
俺の方が――
「お前、何者だ?」
警戒した。
「俺? 神崎さんが全て言ってくれたじゃないか。俺がどういう人物かって」
イチルに聞いたのか?
俺のトップシークレットを。
「計都、櫂の過去知ってるの!!?」
嬉しそうなのは芹霞だけ。
「皆全然知らないから、あたし1人芝居みたいで凄く寂しかったの。だったら今度一緒に昔を語「いらん!!! 必要ない!!! 必要以上に近づくな!!!」
俺は、計都の手を両手で握り締めている芹霞を引き剥がし、無理やり俺の横に置いた。
「お前の立ち位置は此処!!! 昔に戻るな!!!」
俺の強い語気に、皇城翠がぴょんと飛び上がった。
「ふうん、今でも君達は仲がいいんだね~。全然何にも変わっていないんだね。変わったのは外貌ばかり」
「そうなの!!! あたしと櫂は何一つ変わらず仲が良「お前は黙っていろ!!!」
まるで過去から何一つ変えられていない無力な男だと、そんな侮蔑なものさえ向けられているように感じて、益々俺は警戒する。