シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
「疑うの? じゃあはい、これはK大の学生証。これは運転免許証。これはパスポート。戸籍謄本でも取ってくる?」
"黄幡計都"
写真も確かにそうだ。
「お前…そんな顔で、よく公的な証明写真として通ったな…」
「如月くん、突っ込むね。人柄だよ、ひ・と・が・ら」
まるで自己陶酔しているような喋り方。
俺は――
使い魔である"エディター"を思い出していた。
おどおどしていたくせに、突如高慢な態度に変わった彼女。
それに…似ている気がする。
イチルに接触あった義兄だからか?
「お前は…イチルと血の繋がりはあるのか?」
「…ないよ?…と言った方がいいくらい、薄くはね。だけどないと思っててよ。それくらい薄い関係だから」
では、態度が相似しているのは血の成せる業か?
外貌と違和感があることに、芹霞も…惑っているようだ。
そんな時、桜が煌に耳打ちして。
煌が頷き、翠を連れて部屋から出た。
「朱貴の元に行かせました。時間が、惜しいので」
桜が一礼して言った。
「ねえ…外で君の推理を聞かせて貰ったけれど、紫堂くんは1つ勘違いしている」
計都は俺に言った。
「上岐妙と共有している身体は…あのイチルじゃない」
俺は目を細めた。
「上岐社長は確かにイチルの身体を欲しがった。養女にする程ね。そして一人娘の妙はそれを妬んでイチルを散々に虐めた。それは事実。
だけど、10年前に上岐妙が殺したのは、イチルではなかった」
計都は続けた。
「イチルと酷似した双子のオッドアイ。イチルかどうか見抜けない程、妙は嫉妬と憎悪に狂っていた。黄色い服を着ていたオッドアイを…首を絞めて殺したんだ。
黄幡を継ぐ者は代々オッドアイなんだ。つまりイチルは直系だったんだけれど、片割れが次期当主に選ばれたから、養女に出された。
イチルの黄色好きは、その片割れの模倣だった。そしてその片割れもまた模倣していた」
「何にだ?」
「黄衣の王」
俺の脳裏に…
黄色い蝶が飛んだ。