シンデレラに玻璃の星冠をⅠ


「そんな…そんな!!!確かに此処にあって、その中に櫂様達は…!!!」


私の頭は混乱した。


「なあ…桜。俺達が理事長室に来た時、ロッカーなんて、場にそぐわないもん…なかったぞ?」


「俺も見た記憶がないかも……」


煌と翠が言った。


思い返せば――


私だって、ロッカーというものを当初より記憶していたわけではなくて。


あの時。


計都が"ロッカー"という単語で氷皇の言葉を伝えた時。


部屋が破壊されて焦ったあの時。


初めてロッカーというものの姿を見た気がする。


「どういう…ことだ。櫂様は玲様は…芹霞さんは…由香さんは!!?」


私の声は、動揺に掠れきっていて。


「お前…今、"計都"と言ったな」


腕組みをした朱貴が不意に尋ねてきた。


「それは…"黄幡計都"のことか?」


その顔は、不安を煽るような非常に険阻なもので。


「ああ。何でも一縷の義理の兄貴だとかいう…」


代わって答えた煌に、朱貴は激しく舌打ちをした。



「何で…入れた、あの男を!!!」



忌々しい、そんな怒気に満ちた声音で。


「入れたって言うか…氷皇が招いたって…」


びくつきながら煌が言った。


「何で氷皇があの男を此処に招くんだ!!!!

第一氷皇の名前が、信用に値するわけがないだろうが!!!

ああ――…

俺が傍から離れたのを見越したのか!!!」


「な、何だよ、計都が何なんだ?」


騒ぐ煌に、朱貴は睨みつけるようにして怒鳴った。


「あの男の仕業だ、この幻覚は!!!」


私には、その意味が理解できなくて。


「……は? 計都って…あれだぞ? 長い前髪顔に垂らして、のそっとしてもそっとしたどう見てもオタク…」


「外貌だけだろう!!! 顔を見たのか、お前達は!!!」


「いや、だから前髪を……」



「あの男は!!!

"ディレクター"だ!!!」



朱貴が叫んだ。


< 896 / 1,192 >

この作品をシェア

pagetop