シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
"ディレクター"?
「黄幡会で一番厄介な男だ!!! お前達も会っただろうが!!! 片目碧眼の男を!!!」
私の脳裏に思い浮かぶ顔がある。
非常に整った顔をしたオッドアイ。
確かに背格好は似ているかも知れない。
だけど、だけど!!!
「あれは"マスター"では!!?」
「違う!!! "マスター"は、"ディレクター"の手に抱かれていた子供の方だ!!」
「何だって!!!?」
確かに――
誰かに問い質して聞いたわけではない。
誰もが彼らを向いて"マスター"と呼んでいただけであって。
その独特の…特異の圧感に、頂点の者であると勝手に錯覚していただけで。
「"マスター"が司令塔なら、"ディレクター"は、実行部隊たる"エディター"を含めた部下すべてを動かすシナリオを練る男。そして"エディター"を引き入れた、"条件"を提示したのも奴だということを忘れるな。
それが自ら氷皇の領域まで乗り込んで、実際のその内部にまで入ってこれただけでも、頭脳だけではなくどれだけの力を秘めた男か、想像つくだろう!!!
あの男が仕掛けた罠に、まんまと乗りやがって!!!」
「罠!!? じゃあ櫂は!!!?」
煌が悲鳴のような声を上げた。
「……待て。その場所の…気の名残…」
そして朱貴は目を瞑った。
「ああ、この気は…九星の陣。だとしたら…そのロッカーだとかいうものの影には、周涅がいる」
周涅!!!
途端に馬鹿蜜柑が、朱貴の足下に土下座した。
「なあ…周涅なら、玲を助けられるんだろ!!?
七瀬に負担かけたくねえから…周涅の連絡先、教えてくれねえか? 周涅に頼んで…玲を…」
「――無駄だ」
朱貴はばっさりと斬る。