シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
「あの男に…人間の言葉は通じん」
「朱貴、それは俺も同感だけど…だけど周涅なら出来るだろ、紫茉のように夢に潜ること」
皇城翠も土下座の格好をする。
「翠くん!!! 僕に何をしているんですか、お立ちなさい!!! 貴方はそんなことをすべき方ではありません!!!」
皇城翠は、かなり朱貴に甘やかされている。
「だけど朱貴。頼むよ、俺だって周涅呼び込むのは嫌だけれど、俺…早く紫堂玲助けたいんだ。だけど紫茉は無理だ」
すると朱貴は溜息をついて、ウェーブがかった煉瓦色の髪の毛を掻き上げ、天井を振り仰ぐ。
「いいですか。周涅は…敵になっても、味方にはならない。それだけは確実に言えます」
「何でだよ、曲がりなりとも…紫茉の兄貴じゃんか」
「…事情があるんです。周涅で用が足りるのなら、僕だって…すぐにその案を出します。出せないと言うことは、それだけのものだと思って下さい」
「そこを頼む、朱貴!!」
馬鹿蜜柑が平伏した。
「やめろ、駄目なものは駄目だ!!!」
「そこを頼む!!! 玲の命がかかっているんだ!!! 少しでも早く、玲を戻してやりたいんだ!!!」
それでも――朱貴は是と首を縦に振らず。
「櫂様達が周涅の術に導かれて進むのなら…周涅と相対した櫂様達が何とかしないだろうか」
他人任せとも思うけれど。
行き着いた先に、その人物がいるならば。
櫂様なら何とかできるという気もしていた。
「お前は、判っていないな。周涅は…招いているわけではない」
「え?」
「見定めているんだ、紫堂櫂という男を。
そして厄介なのは…周涅に認められた者は…生きていないと言うこと」
「なんだって!!?」
馬鹿蜜柑が驚いた顔を上げる。
「周涅が認めたということは、皇城の敵となりえる…不安愁訴の種。
だから…完膚なきまでに抹消する。
あいつは本当に容赦ない。絶望の底に沈めた上で骨も残さず消し去る奴だ」
そう言った。