シンデレラに玻璃の星冠をⅠ

何と言うことだ…。


「ああ、ああ…やっぱあいつ胡散臭いと思ってたんだよ!!! やっぱそんなことしてたのかよ、あいつ!!!」



あのロッカーの行く先が、周涅に続いているというのなら。


「紫堂櫂が切り抜ければ切り抜けられるだけ、周涅は歓喜するだろう。あいつは…相手に飢えているからな。伊達に大三位をして、御前の信頼を勝ち取っていたわけではない」


櫂様…


「九星の陣ってどんなものなんだ?」


問うた私に、念を押すように朱貴は逆に私に問う。


「…紫堂櫂は、紫堂玲を連れたんだな?」


私は頷いた。


「九星の陣では…その場において意識なき者、対象者の近くで眠れる者の…深層心理が舞台となる。つまり、紫堂玲の心の内が迷宮化して、通り抜けられれば周涅に繋がる。俺の八門の陣も敵を惑わす目的だが、奴は出口に行き着く印なんてつけちゃいない。

抜け出れないことをまず念頭にした作りだ。


更に、厄介なのは…自分が信じる者の心の内を見せられるということは、自分に対する評価も同時に判ってしまうということ。そいつがどんなに表面で自分を褒め称えていても、心の底では、必ず意識とは相反するものが眠っている。どんな聖人でも、だ。


それを目の当たりにした紫堂櫂は、果たして平静でいられるかどうか。今まで通り、紫堂玲を信頼できるか。場合によっては憎しみが芽生えたり、戦意すらわかない程うちのめされて再起不能になる可能性がある」


櫂様に絶対的忠誠を誓う玲様。


その逆の心を…櫂様が見られてしまう、と?


ぞっとした。


普段でも、女装していても。

お二人は笑顔を向け合っていて。

本当に仲睦まじい従兄弟で。


芹霞さんの奪い合いに発展しないのは、やはり相手を大切に思うから。


それが…崩れてしまったら?

連携がとれなくなってしまったら?


何より協力体制でいなければいけないこの状況の中、


――約束、して欲しいんだ。


櫂様と玲様が仲違いされたら?


私は…恐れ戦(おのの)く心を感じた。


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