シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
 
「俺が渡した八門の陣の符呪は…紫堂櫂が持っているのか? あれがあるならば…あいつに機転がきけば、とりあえずはそれによって回避することは…」


「ない」


私は断言して…唇を噛みしめた。


今思えば――


「何者かによって、符呪は細かく破られた」


あれは、これに至らせる為のものだったのか。


「何で…真っ先に俺に言わない!!? 早く判っていたのなら、前もって手が打てたものを!!!」


朱貴が苛立ったように怒鳴った。


「久涅に先手を打たれてたのか!!! ということは恐らく、俺が追加補充を持たせるのを見越しているということで…危険だ、もうあの符呪は使えない!!! どちらにしろ俺の術そのものも…皇城に阻まれ、神奈川の中には入ることは出来なかったが」


「え? 入れなかったのか?」


皇城翠が驚いた声を出す。


「昨夜…鎌倉にある皇城本家の結界が強さを増しました。あの厚さは…今の僕の力では、抜けることが出来ない。せいぜい…皇城の領域である神奈川付近に道を作ることぐらい。恐らく…大三位の周涅と、雄黄様が…結界を作られているのでしょう。でなければ、ありえない程の…結界威力」


「兄上も…周涅と…」


「それは、紫堂の家督争いの巻き添えを食わない為の自己防衛か、もしくは久涅の協力要請に応えるものだったのか…それは周涅か雄黄様に聞いてみなければ、皇城の中枢判断は…僕には判断出来ません…」


皇城のことも他も色々と知っている朱貴は、皇城中枢に居る者ではないのか。


だとしたら余計に思う。


この麓村朱貴は、どういった存在なんだ?


「つまり神奈川圏内から横須賀港までは、僕の術は一切使えないと思って下さい。自力で…行き進むしか術はありません。

そして此処で符呪を使って紫堂櫂の元に駆け付けようとしても、八門の陣の術は…行き着きたい場所が明確にイメージ出来ていなければならない。

紫堂櫂がどの場所にいるか判らない現状では、符呪もただの紙くずだ。

そんな中、紫堂櫂を誘い込んだのが周涅だというのは、悪状況に拍車をかけています。最悪です」
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