シンデレラに玻璃の星冠をⅠ


「なあ…」


煌がぎらついた目を寄越した。


「周涅という奴の処に行って、術を解いて貰えばいいじゃねえか」


馬鹿蜜柑は――必死だった。


「俺達は幸いにも…地上の現実世界にいる。リアル方面から周涅を説得…場合によっては力で脅せば、櫂達を戻して貰えるかも知れねえ」


すると、朱貴は蔑むように薄く笑った。


「お前は…周涅を軽く見ている。お前達程度で動かせられる奴じゃない。逆に利用されて、紫堂櫂を追い詰める駒にされるのがオチだ」


「できなくても――

やるしかねえんだよ!!!」


吼えるようにして叫んで立ち上がった煌は、朱貴の胸倉を掴んだ。


「今俺達に…俺に出来ることは、どんな僅かな可能性にでも賭けて、櫂達を救い出すことなんだ!!! 何処だよ、何処にいるんだよ…周涅っていう奴は!!!」


「死ぬぞ?」


「俺が死んでも、あいつらが生き残ればいいんだよ!!! 俺はあいつらを助けないといけねえんだよ!!! そして…櫂と玲を…闘わせるわけにはいかねえんだよ!!! それだけは絶対駄目だ!!! 何より玲がそれを望んでいない!! いないからあいつは…」


そしてぎりぎりと歯軋りをした。


「ワンコ……」


「教えてくれよ。俺の全てを賭けて、絶対止めてやる。だから、教えてくれよ!!!」


「教えたとしても…お前達では、入ることが出来ない領域だ」


朱貴の顔が翳る。


「本家かよ?」


強張った翠の声に、仕方ないというように…朱貴は頷いた。


「皇城本家自体にかけられた結界は…凄まじい。認められた者以外が入ろうとするだけで四肢が吹っ飛ぶ」


「だけど――」


皇城翠は笑った。爽やかに。


「俺がいれば、そんなこともないだろ? 一応、俺…次男だし。俺が引き連れていれば、邪険な扱いにはならないはずだ」

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