シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
「ねえ…此処、寒くない?」
先刻から寒気がするんだ。
刑場の話題になったからだろう、何だかざわざわと嫌なものが空気に漂っている気がして。
黙っていれば、何かの笑い声が聞こえてくる気がして、あたしは…玲くんを両腕に抱えたままの櫂の服と、反対側の手で由香ちゃんの手を握った。
「何だ、芹霞。怖くなったのか?」
櫂の揶揄が飛んでくる。
「こ、こここ怖くなんか…」
そして――
それは突然で。
「…おかしい」
櫂が、酷く警戒した声調に切り換えたのは。
このタイミングでそれはありえない。
怯懦の心(チキンハート)を益々煽られる。
「し、紫堂。お、おかしいって何がだよ? 紫堂が言うと、洒落にならないんだよ…」
櫂は足を止め、後ろを振り向いた。
「やはり…。
何より桜が来るのが遅すぎるのと…
此処に氷皇の色がない」
「色?」
「ああ、とにかく己の色で染めたがるあの男が用意したものに、それがない。意味ありげな地蔵なんか出すくらいなら、まずあの男なら…青く染め上げた地蔵でも出しているだろう」
確かにそうだ。
それくらい、嘘臭い笑い声でやらかしそうだ。
あたしの家の壁を青くしたくらいなんだから!!!
許すまじ!!!
怒りが沸々と湧いてきてしまった。