シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
「ここは――本当に、氷皇が導いた場所なんだろうか」
青色のない世界。
だけど――
「だけど計都が…」
「あいつが一方的に言っているだけだ。氷皇から計都のことを聞いていたか? 実際、氷皇が計都と馴染んでいる姿、お前は見たことがあるのか?」
「ない、けど…じゃあ計都が騙したの!!? ありえないよ、彼は…」
漆黒の瞳が、僅かに細められた。
「なあ…芹霞。お前、どうして…計都に警戒の念がないんだ?」
「え?」
「信用する程の付き合いがあったわけでもないだろう?」
「あ、ああ…でも、久涅からあたし守ろうとしてくれたし。あまり役に立たなかったけれど…あ、立ったのかな…」
「久涅に、お前…会っていたのか?」
それは驚いたように。
「うん、合コンの会場で偶然。紫堂の次期当主名乗って無礼三昧。何たる極悪櫂だと噛み付こうとしたあたしは、計都に止められて逃げたというか。久涅も計都の名前を聞いて、深追いしなかったし」
「久涅と計都は…無関係ではないわけか」
「立場的に…計都には手を出せない、みたいな久涅の反応だったけれど」
そう言うと、益々櫂は深く考え込んだ。
「イチルの兄というのは真実なんだろうか」
「でも"黄幡"姓なのは事実だし。久涅もその名前、了承していたよ?それに…イチルちゃんしか知らないあたし達の思い出、聞いているんだしさ」
「……。随分と…内情に詳しかったよな、あいつ。直系たるイチルとは、ないのとも同等の…薄い血の繋がりしかなく、」
――俺早々に家出てるし、普段からあの家とは交流なかったから、俺を絞っても情報は出てこないからね~。
「それなのに随分と…黄幡家のことを知っている。『戯曲 黄衣の王』とか」
「昔はイチルちゃんとべったりだと言ってたし。昔は、黄幡家の深い処にいたのかもしれないよ?」
「……」
櫂は、何か釈然としない顔で考え込んだ。